この記事を執筆した当時の私
獣医師/Ph.D.(獣医学博士)/大学や製薬会社で基礎研究に従事していた元研究者/ちょっと前まで犬・猫を診る臨床に従事していたが、現在はズーノーシスの予防と啓発ができる動物病院を探す求職者
- 患畜に麻薬を使用したことをカルテに記録しない院長
- 麻薬を使用したことを麻薬帳簿に記録しない院長
- 麻薬施用者ではない獣医師に麻薬を使用させる院長
- 麻薬を麻薬専用の保管庫で保管しない動物病院
こんちには!
獣医師の修です。
私は就職先の動物病院選びを間違えました。
「なぜ、間違えたのか?」を考えていたら、多数の「ヤバい」共通点があることに気づきます。
どうして、それに着目しなかったのか?
見学時にそれに気づけたら、絶対に就職しなかった。
私と同じ経験をしている人がどのくらい存在するかは分かりませんが、そういう状況に陥る人が少なくなることを期待して、その「ヤバい」の言語化に挑戦中です。
6回目は医療用麻薬の使用記録や管理がずさんな動物病院です。
医薬品の記録や管理が杜撰な動物病院
動物病院における医療用麻薬の取扱いに関しては、その購入・使用・保管・記録の全てにおいて法律がルールが定められています。
- 卸売業者から交付された麻薬譲渡証は2年間保存
- 麻薬は麻薬専用の保管庫で保管しないとダメ
- 患畜に麻薬を使用したことを診療簿(カルテ)に記録
- 麻薬を使用したことを麻薬帳簿への記載
国家試験でも問題として出てくるほど有名なルールですが、私はそれが遵守できていない動物病院を経験しました。
- 動物に麻薬を使用したことをカルテや帳簿に記録しない院長
- 麻薬施用者ではない獣医師に麻薬を使用させる院長&年配獣医師
- 麻薬を麻薬専用の保管庫で保管しない動物病院
- 麻薬帳簿を改ざんする動物病院
1つずつお話していきますね。
麻薬を使用したことをカルテに記録しない
麻薬施用者である獣医師が動物に麻薬を使用したときは、カルテにそれを記載しなければダメなはずなのですが…それができていない動物病院がありました。
以前、院長がカルテを書かない動物の記事を書きました。
普段からカルテを書く習慣のない院長が麻薬の時だけ記録するのも不思議ではありますが…
獣医師法だけでなく、麻薬及び向精神薬取締法も平気で無視するとは思いませんでした。
第四十一条 麻薬施用者は、麻薬を施用し、又は施用のため交付したときは、医師法第二十四条若しくは歯科医師法(昭和二十三年法律第二百二号)第二十三条に規定する診療録又は獣医師法(昭和二十四年法律第百八十六号)第二十一条に規定する診療簿に、患者の氏名及び住所(患畜にあつては、その種類並びにその所有者又は管理者の氏名又は名称及び住所)、病名、主要症状、施用し、又は施用のため交付した麻薬の品名及び数量並びに施用又は交付の年月日を記載しなければならない。
麻薬を使用したことを麻薬帳簿に記録しない
カルテに記録を残さない院長が麻薬帳簿に記録を残すはずがありませんよね。
麻薬帳簿への記載は、使用を目撃した施用していない獣医師やその他のスタッフがしていました。
何度か記録をお願いしたこともありますが、逆ギレされて終わりました。
勤務したばかりの新人で、臨床のことを何も分かっていない私が言ってもダメってことですかね?
融通が利く人?
社会は「物事に対して臨機応変にうまく対処できる」こと、いわゆる「融通が利く」人間を求めています。
では、それは次のような場合にも当てはまるのでしょうか?
- 麻薬の使用を偶然目撃したスタッフが帳簿を記入する
- 手術があった日は麻薬を使った可能性が高いので、それを院長に確認する
もしそうならば、私は「臨機応変にうまく対処できる人間」にはなりたくありません。
麻薬施用者ではない獣医師に麻薬を使用させる
獣医師が動物病院で診療・治療のために麻薬を取り扱うには、麻薬施用者免許を各都道府県知事から受けなければなりません。
この免許は個人に与えられる免許であり、免許を受けた者以外は麻薬を取り扱えない仕組みになっています。
ですが、私が勤務した動物病院の中には麻薬施用者ではない獣医師に麻薬を使用させる所がありました。
人手不足が理由なのか?、
少しでも経験を積ませてあげたいという歪んだ教育方針なのか?
なぜ、そうさせるのか詳細はわかりません。
ただ、勤務していた時は、以下のようなやりとりを何度かした記憶があります。
麻酔の準備は?
必要量は計算し、準備できるものは用意しました。
ケタミンがないじゃない!
私は麻薬施用者ではないので準備できません。
院長がやってください!
はぁ…(ため息)
この院長は麻薬施用者ではない者に麻薬を使用させることを必要悪と考えているのかもしれません。
麻薬を麻薬専用の保管庫で保管しない
診療施設で管理する麻薬は、診療施設内に設けた専用の保管庫(鍵をかけた堅固な設備)に保管しなければダメなんですが、それができていない動物病院もありました。
- 鍵をかけない所
- 保管庫に麻薬を収納しないところ
手術の頻度が多く、麻薬を頻繁に使用する獣医師にとって、法で定めるような保管・管理方法は面倒なのでしょうね。
麻薬帳簿を改ざんする動物病院
麻薬を使用したことをカルテに記録しない&麻薬を使用したことを麻薬帳簿に記録しない動物病院では、医薬品の管理がずさんです。
だから、麻薬類の数量もちゃんと管理されておらず、保健所から指導を受けている動物病院もありました。
悪質だなって感じたのは数量を合わせるために麻薬帳簿を改ざんする動物病院があったことです。
- 専用のゴムで擦すれば消して書き直すことができる消せるボールペンを使っているところ
- 本当は使っていないのに消費したことにしてカルテと帳簿に追記するところ
日々の業務終了後に記録を確認すれば良いだけでは?
って思うのですが…
「今までこの方法で問題が起きたことが無い」という経験が優先されると、悪しき慣習は残り続けるんですね。
「動物の生命を救ってる」は免罪符になるのか?
小動物の動物病院にいる獣医師は、動物病院は病気を診断・治療する所とか獣医師は動物の生命を救ってなんぼと考えている臨床家が多いですね。
そして、院長は診療にしか興味がない人ばかりです。
「動物の命と向き合う尊い仕事」という社会的なイメージもありますし、飼い主にとってペットはかけがえのない存在ですから、ペットの生命を救ってなんぼは正しいのでしょう。
でも、それが各種法規制を無視する免罪符になるのでしょうか?
「日本社会は本音と建前で、動物医療界ではそれが常識」ならば、私は臨床家には向かないのでしょうね。私は法規制やガイドラインを無視する職場では働きたくありませんから。
【まとめ】医薬品の使用記録や管理がずさんな動物病院はヤバイ
医薬品の使用記録や管理がずさんな動物病院についてまとめました。
今回は「ヤバい」レベルが高めの内容でしたねw
私自身も見て見ぬふりをしていた側面がありますので、もしかしたら責任を問われるかもしれません。
それでも言語化にチャレンジした理由があります。
これから獣医療業界で働くことを考えている人や別の動物病院への転職を考えている人に、こういう動物病院があるという事実を伝えたかったんです。
動物病院の雰囲気、院長やスタッフの印象、立地、給与などをしっかり見て良いと思ったけど、いざ就職したらヤバイ所だった…って失敗する人を減らしたいのです。
「本音と建前があるんだから、そのくらいは仕方ないでしょ!」って考えることができる人以外は、医薬品の使用記録や管理がちゃんとできている動物病院を探すことをオススメします。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
2024年1月30日 修(獣医師&獣医学博士)
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