【JC03】FeLV感染猫対するIFN-ωの治療効果

EBVMの実践を目指す獣医師によるジャーナルクラブ3回目 ジャーナルクラブ
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この記事を執筆した当時の私
獣医師/Ph.D.(獣医学博士)/大学や製薬会社で基礎研究に従事していた元研究者/ちょっと前まで犬・猫を診る臨床に従事していたが、現在はズーノーシスの予防と啓発ができる動物病院を探す求職者

修

こんちには!

獣医師の修です。

3回目のジャーナルクラブを始めましょう!

今回読んだ論文は “Therapeutic effects of recombinant feline interferon-omega on feline leukemia virus (FeLV)-infected and FeLV/feline immunodeficiency virus (FIV)-coinfected symptomatic cats” です。

文献の詳細情報は以下の通りです。

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研究の目的

猫白血病ウイルス(FeLV)感染および FeLV と猫免疫不全ウイルス(FIV)の重複感染に関連した臨床症状を呈する猫に対する遺伝子組換え型猫インターフェロン(rFeIFN-ω)の臨床効果を評価すること。

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研究デザイン

多施設における二重盲検試験

  • 対象基準を満たした 81 頭の猫を無作為に 2 群に分け、rFeIFN-ω(Virbagen® Omega)またはプラセボ(生理食塩液)を 1 日 1 回、連続 5 日間皮下投与
  • 二重盲検法:ペットの飼い主は飼育猫がどちらの群に入ったか分からないし、研究者(治験責任獣医師)もどちらを投与したのか分からない

IFNの調整

  • 凍結乾燥された rFeIFN-ω を使用直前に生理食塩液で溶解し 5 mU/mL に調整
  • rFeIFN-ω および生理食塩液は 4℃で保存

介入方法

  • rFeIFN-ω(100万U/kg/日)またはプラセボを1日1回皮下投与
  • 投与スケジュールは連続 5 日間を3回
    • 1回目:0~4日目
    • 2回目:14~18日目
    • 3回目:60~64日目
  • すべての猫は担当獣医師の判断により個別の支持療法(以下参照)が併用されたが、ステロイド系抗炎症薬の使用は禁止
    • 水分補給(リンゲル液)
    • ビタミン剤(B12、C、K、または経口ポリビタミン液)
    • 抗菌薬(エンロフロキサシン、アモキシシリン、セファレキシン)
    • NSAIDs(トルフェナム酸、ニメスリド、ケトプロフェン)
    • 鎮痙薬
    • 肝臓保護薬
    • 寄生虫駆除薬
    • 利尿薬
    • 麻酔薬
    • 止瀉薬
    • 抗真菌薬

統計解析

  • 定性的なパラメータ(例:性別、生活環境、ELISA法による感染状況、臨床症状)についてはカイ二乗検定
  • 定量的なパラメータ(年齢、体重、臨床スコア [CS])についてはStudent t検定
  • 生存率:0 日目の貧血と非貧血の状態を考慮したCoxモデルで比較
  • 総CS:0 日目の貧血を共変量とした反復測定の分散分析(ANOVA)により群間比較
  • WBC数:0 日目に白血球減少または白血球増加を示した猫について個別に分析
  • RBC数および PCV:0 日目の貧血の猫についてのみ解析
  • 製品に関連する副作用の発現率:フィッシャーの正確確率検定により2群間で比較
  • 有効性及び安全性の解析:片側検定
  • 有意水準α: 0.05

実施場所

フランスにある動物病院

試験期間

1999年3月~2003年1月の4年間

対象動物

以下の基準を満たした猫

  1. 年齢・品種・性別は関係なし
  2. FeLV または FeLV/FIV の感染に関連する可能性のある臨床症状(例:発熱、食欲不振、行動の変化、渇き、脱水、粘膜の蒼白、口内炎など)を少なくとも 1 つ示す
  3. FeLV または FeLV/FIV が ELISA(Snap Combo FeLV/FIV kit)で陽性
  4. 飼い主にインフォームドコンセントを行い、治療に参加する意思があった

対象猫の概要

  • 年齢:3 ヶ月齢~16歳齢
  • 体重:0日目の体重は 1.5 ~ 7.5 kg
  • 雌雄:30匹(37%)がメス、51匹(63%)がオス
  • 品種:86% は雑種

除外された猫

  • 悪性腫瘍(例:リンパ肉腫、リンパ性白血病)に罹患
  • 病態が末期
  •  0 日目の血液サンプルが未採取
  • 注射回数(IFNまたはプラセボ)が5回未満
  • 120日以前に追跡調査ができなくなった
  • 飼い主がペットを試験から離脱させた

測定項目

  • 獣医師は、0・14・30・60・120 日目に 1 日 1 回、猫の様子を観察
    • 飼い主が診療所に来院
    • 採血を行い、WBC・RBC・PCVを観察
    •  6・9・12 ヵ月後に獣医師が飼い主に連絡
  • 以下の臨床症状を観察し、重症度をスコア化
    • 直腸温
    • 一般行動
    • 食欲
    • 口渇
    • 脱水
    • 粘膜の状態
    • 口内炎
    • 死亡
  • 臨床スコア(CS) :各検査で示された徴候のスコアの合計
    • 死亡または安楽死した猫:最大合計に相当する20のCSを割り当て
    • 臨床徴候が観察できない場合:その猫の CS は無し
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研究結果

  • 9ヵ月時点における死亡率
    • プラセボ群の死亡率:59%(23/39)
    • IFN 群の死亡率:39%(15/38)
    • IFN 群の生存率はプラセボ群のそれに比べて高い(p = 0.049)
  • 12ヵ月時点における死亡率
    • プラセボ群の死亡率:59%(23/39)
    • IFN 群の死亡率:47%(18/38)
    • IFN 群の生存率はプラセボ群のそれに比べて高い傾向(p = 0.11)
  • 介入直後から全ての猫で臨床症状が急速かつ全般的に改善
    • IFN投与群の CS はプラセボ群のそれよりも低い(p = 0.049)
  • 0日目に白血球減少または白血球増多を示したコホートでは、IFN投与によりそれが顕著に改善または是正
  • IFN 投与群の PCV は対照群のそれよりも高い傾向
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臨床上の重要性

  • FeLV 感染および FeLV/FIV 重複感染に関連した臨床症状を持つ猫において、rFeIFN-ω の投与は臨床症状および生存率を有意に改善させる。
  • IFNの治療効果は2回目の治療以降も有効である。
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読んだ感想と疑問

  •  rFeIFN-ω の投与量が変では?
    • 5 mU/mL に調整した rFeIFN-ω を 1 MU/kg/day で投与:200000000 mL/kg/day;調整後の濃度の記載ミスか?;5 MU/mL なら 0.2 mL/kg/day だから現実的
  • CSを120 日以後の観察が十分に実施できなかったのは残念
    • 感染猫の 8 割が 2 ~ 3 年で死亡することを考慮すると、やはり年単位の追跡ができる実験デザインを組む必要
  • ウイルス量を比較してはいなかったが残念
    • この論文で示された効果は抗ウイルス効果によるものだろうか?ウイルス複製を阻害していることを確認できたら面白い
  • 遺伝子組換え型ヒトインターフェロン(IFN-α2A)を使用している病院もあったけど、これも文献情報はあるのだろうか?ヒトのIFN-αは種特異性が低いと言われているが、この論文のように猫で検討した文献を探してみよう。

2023年12月16日 修(獣医師&獣医学博士)

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