この記事を執筆した当時の私
獣医師/Ph.D.(獣医学博士)/大学や製薬会社で基礎研究に従事していた元研究者/現在は動物病院で犬・猫の診療をしている臨床獣医師
- 犬の飼育には毎月2万9千円がかかる
- 犬の生涯でかかる費用は約540万円
- 猫の飼育には毎月1万4千円がかかる
- 猫の生涯でかかる費用は約270万円

こんにちは!
獣医師の修です。
今回もよろしくお願いします。
ここ数年、以下のような新規の飼い主さんが多い気がします。

子猫の動画を見てたらすごく飼いたくなっちゃって。
近くに野良の子猫がいたのを思い出して拾ってきたので、飼い方を教えてください。

ペットショップに行ったら目が合っちゃって衝動買いしちゃいました。
先ず、何したら良いですか?
皆さんは、この現状をどう思いますか?
実際、即断即決で動物を飼うかどうかを決める人はいます。

「思い立ったが吉日」とは言うけど、ちょっと安易な決断だと私は思います。
飼う前に相談しに来てくれたら「ペットを飼うって大変だよ!」って話をするんだけどな…って考えながら、いつも診察を始めています。
少し前まで、日本動物愛護協会のCMも流れていましたね!
やっぱり、一時の感情でペットの飼育を決断をすることはオススメしません。

動物を飼う前に考えて欲しいことは色々あります。
- 飼育環境のこと
- 人獣共通感染症のこと
- 餌代や診療費などにかかるお金のこと
- その動物を診てくれる動物病院の所在地
- 自分が病気になり面倒を見ることが難しくなった時のこと

上記について考えると、「可愛い~」ってだけで動物を飼えなくなりますよ!
そして今回は 3番目の「お金」についてまとめました。
その理由は…

予想以上にペットにお金がかかって、家計が苦しくなっちゃったの…
どうすればイイですか?
こういった相談も増えているからです。
皆さんは、犬や猫を飼った場合にかかる費用について考えたことありますか?
この記事を読むと、犬や猫を飼った場合にかかる費用の概要が分かりますよ!

動物を飼う前にはしっかりとお金のことも確認してくれると嬉しいです。
「ペット飼うって大変!」【初期費用はいくら?】
犬や猫を最初に飼うときは、次のような費用がかかってきます。
最近は保護犬・保護猫の譲渡会などもあり、ペットショップで購入する以外の方法でペットを飼い始める方も増えていますので購入費は「様々」としました。

犬種でかかる費用が大きく変わる場合もあるので、後で触れますね!

猫の健康診断費用が犬よりも高いのはどうして?

猫の場合は野良猫を拾ってくることも多く、その場合、糞便検査やFeLV/FIV検査などが必須となるため、費用は少し高くなります。
もし譲渡会で犬や猫をもらうときは、こういった検査結果についてもしっかり確認しましょう!
初年度のワクチンは3回接種が必要なことも忘れずに!
翌年からは年1回のワクチンまたはワクチンの抗体価測定で大丈夫ですよ!
見落としがちな【毎月の費用】
ペットとの楽しい生活を維持するにはお金がかかります。
犬および猫に掛かる毎月の支出は以下の通りです。

犬は約3万円、猫は1万4千円が毎月かかります。

犬の方が猫の2倍の費用がかかるんですね!

飼育犬種にもよりますが、病気やケガの治療・シャンプー・トリミング代などが猫よりも高額になる傾向があります。
そして、犬は小型犬~大型犬までサイズが分かれているので、受けるサービスや医療費にかかる毎月費用も幅があります!

大型犬のフード代は1年で10万円以上もかかるのね。
ちなみに、この数字は1頭だけ飼った場合になりますので、多頭飼いする場合は、当然、上記以上のお金がかかります。

具体的な品種ごとの違いも確認してみましょう。
アニコム損害保険株式会社が出している人気犬種ランキング2023の上位4犬種の年間費用は以下の通りです。

トイ・プードルはシャンプー・カット・トリミング代が高くなるなど、犬種ごとに毎月かかる費用は少しずつ異なりますね!
ペットにかかる生涯費用をシミュレーション
次は、犬・猫の生涯にかかる費用の総額を見ていきましょう!
犬1匹を飼った場合に生涯でかかる費用は約540万円、猫の場合は約270万円となります。
ペットとの暮らしは、楽しい時間・癒しの時間ばかりが注目されがちです。

その生活を実現するためには、多大な費用がかかることを忘れてはいけません。これからペットを飼いたい方は、経済的な事情をよく考えてから行動してください!
ペットで飼育で忘れがちな「家」への支出
さて、ペットの飼育環境についても考える必要があります。
ペットを飼う場合は、一戸建て or ペット飼育可の賃貸物件を選ぶことになりますが、余程のお金持ちではない限り、「一戸建て購入して動物を飼います」とはならないでしょう。

ペット飼育可の賃貸物件の特徴をまとめてみました!
- ペット保証金を設定している物件あり
- 退去時の修繕費は追加請求されることあり
- ペット飼育可物件は、敷金や礼金が高くなる傾向あり
- 入居時にワクチン接種証明書の提出を求める物件あり(文書作成費の発生)
ペット費用が生活費を占める割合の理想は?
最後に、ペットにかかる費用が生活費に占める割合について考えてみましょう。
家計の支出は、以下のような配分が理想といわれています。
項目 | 割合 |
収入 | 100% |
住居費 | 25% |
貯蓄 | 25% |
食費・外食費 | 15% |
ファッション・美容費 | 10% |
交際費 | 6% |
教養・娯楽費 | 5% |
水道・光熱費 | 4% |
通信費 | 4% |
交通費 | 2.5% |
保険料・医療費 | 2.5% |
生活用品 | 1% |
ペットの費用を教養・娯楽費と考えてみます。
政府統計の総合窓口で公開しているデータセット*を基準にすると、定期収入は282,109 円の 5% だから 14,105 円となりますね。
猫はギリギリ飼育できそうだけど、犬の飼育は無理ですね!
経済的余裕のある人しか動物を飼育してはいけないってことだね。

このモデルで考えると、猫を飼育したい人は手取額が27万円ほど、犬を飼育したい人は手取額が60万円ほど必要となりますので、今の日本では非現実的ですね。
だから、例えば、ファッション・美容費や通信費を抑えて、教養・娯楽費に充てるという工夫が必要になります。
もちろん、自身の生活の質を落とさないことが前提です。
食費とかを削って健康が害したら、本末転倒ですからね。
*1世帯当たり1か月間の収入と支出(単身世帯)、調査年月:2022年
【まとめ】ペット飼育前に忘れがちなお金の話
ペットとの生活は有意義なものですが、それを維持・継続するためにはお金が必要だということが伝わったでしょうか。
「飼ってしまえば、何とかなる」などと安易な考えで行動するのは止めてくださいね!
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
2023年12月6日 修 (獣医師&獣医学博士)
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