SFTSウイルスの脅威!犬や猫から感染する危険性と飼い主さんの命を守るための対策
- SFTSは致死率が30%もある怖い病気
- SFTSVの感染経路はマダニに刺されるだけじゃない
- ペットのマダニ対策が大切
こんちには!
獣医師のアッチーブです。
今回は、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)を説明していきますね。
2011年に報告された比較的新しい感染症で、日本でも発生報告があります。
マダニが感染拡大に関与するダニ媒介性の病気ですが、実は犬や猫などの動物からの感染もあるんです。
飼い主さんに知っておいて欲しい情報を中心にまとめるので、最後までお付き合いください。
この記事のゲスト:大輔さん
40代。地域猫活動が趣味。猫派だが犬も好きで1頭飼育中。
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の基礎知識
重症熱性血小….なんだっけか?
たしか、SF…ってやつ!
それについて教えて!
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)のことですね!
承知しました!
2011年に中国の研究者らが報告したマダニ媒介性の新興ウイルス感染症ですね。
日本でも2013年に患者が初確認され、以後毎年60~100名程度の患者が報告されています[1-2]。
致死率は30%と非常に高く、これまでに日本で確認されたSFTS患者の約90%が60歳以上なんです[2]。
そんな怖い病気が日本でも発生しているのか…
あまり知られてませんが、実はそうなんです!
SFTSは、マダニ媒介性の病気ではありますが、感染経路はマダニに刺されるだけではありません。
SFTSウイルスに感染・発症した猫の治療に関わった獣医療関係者で感染報告があります。
血液・尿・唾液などの体液に直接触れた場合でもSFTSウイルスに感染すると考えられていますね[3-4]。
動物病院で働く人は常に危険と隣り合わせですね…
SFTSの原因
病気の原因は何かな?
細菌?ウイルス?
SFTSの原因はウイルスです。
ここで、SFTSウイルスに説明しますね!
ちょっと難しいですが、ウイルスの分類は以下の通りです。
- 科:フェヌイウイルス科(旧ブニヤウイルス科)
- 属:バンダウイルス属(旧フレボウイルス属)
- ウイルス名:ダビエバンダウイルス(通称:SFTSウイルス)
SFTSウイルス(SFTSV)はマダニが媒介します。
日本ではフタトゲチマダニやタカサゴキララマダニなどの複数種のマダニがウイルスを保有していることが報告されています[5]。
人はウイルスを保有するマダニに刺されることで感染します。
ただ、マダニに刺された痕が見当たらない症例も報告されているので、マダニ以外の感染経路にも注意ですよ!
飼い主さんは、マダニに刺されてSFTSを発症した犬や猫から感染例があることを知っておきましょう。
猫に咬まれて発症した可能性を示唆する報告やSFTSを発症した犬から飼主に感染した報告があります[3-4, 6-7]。
やっぱり、動物に咬まれるって危険なんだね…
獣医療関係者は特に注意
獣医療関係者におけるSFTSの発症例もあり、2023年10月31日時点で、発症動物から獣医療従事者への感染が11例報告されています[8]。
人から人への感染例
中国や韓国では、SFTSVの人-人感染例も報告されています[9]。
先日、日本でも人−人感染事例となる報告がありました[11]。
SFTSの患者と接した医療従事者の報告なので、一般の飼い主さんが過剰に恐れる必要はありません。
SFTSの症状
ペット(犬や猫)の症状とヒトの症状をまとめます。
犬・猫の症状
- 発熱
- 食欲減退、元気消失
- 嘔吐
- 下痢(犬で散発、猫では稀)
- 黄疸(猫で必発、犬では稀)
- 血液検査では白血球や血小板の減少
人の症状
- 発熱、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛など
- インフルエンザのような症状
- 嘔吐や下痢などの消化器症状
- 血液検査では白血球や血小板の減少
- 特に高齢者は重症化しやすい[2]
発症から2カ月以上も尿中にウイルスが検出された犬の報告もありますので、尿を含む体液の取り扱いには注意が必要です[10]。
SFTSは動物でも症状が出るんですね!
SFTSの検査・診断
検査や診断は動物病院で出来るの?
研究所などではできますが、動物病院内では難しいですね。
実験室レベルでは、血清中のウイルス遺伝子検出(PCR法)と抗ウイルス抗体(間接蛍光抗体法)の検出による診断が可能です。
現在、伴侶動物の疑い症例の実験室診断は以下の機関で実施しています。
- 国立感染症研究所
- 北海道大学
- 東京農工大学
- 山口大学
- 長崎大学
- 宮崎大学
- 鹿児島大学
- 株式会社サンリツセルコバ検査センター
- 株式会社 ベッツクリニカルラボ
先ずはかかりつけの動物病院に相談し、担当医から各組織の担当者に問い合わせてもらうのが良いでしょう。
SFTSの治療【犬や猫の場合】
現在、犬や猫で認可されたSFTSの治療薬はありません。
だから、症状に応じた治療(対症療法)が主体となります。
なお、人医療では、抗ウイルス薬のファビピラビルが、2024年6月に承認されています。
SFTSの予防
SFTSに対するワクチンは、人用・動物用ともに開発されていません。
だから、犬や猫から感染しないように気を付けるしかありません。
具体的には、以下の点に注意してください。
- ペットのマダニ対策を行う
- 野良猫や地域猫に不用意に近づかない
- 動物に接した後は手をよく洗う
- ペットとの過剰な触れ合いは避ける
- キスをしない
- 口移しでエサを与えない
- 布団で一緒に寝ない
農作業など野外作業をする方へ
野外作業をする際は長袖・長ズボンを着用しましょう。
同時にディートやイカリジンなどのマダニ忌避剤を使用することをオススメします。
マダニは吸着してから吸血するまでに時間がかかります。
吸血前に落としてしまえば問題ありませんので、野外作業を終えたらシャワーを浴びる習慣を身につけると良いでしょう。
詳しくは、厚生労働省のリーフレットや国立感染症研究所の資料をご覧ください。
- 厚生労働省:ダニ媒介感染症
- 国立感染症研究所:マダニ対策、今できること
医療機関を受診する方へ
犬や猫などの動物に咬まれたり・引っ掻かれたりして、医療機関を受診する方にお願いがあります。
医療機関の担当者に「ペットの飼育状況」および「咬掻傷歴」を必ず報告してください。
よろしければ、以下のフォーマットをご利用ください。
もし、「具合が悪いけど病院に行った方がいいのかな…」と迷っていたら、救急安心センター事業(♯7119)を利用しましょう!
医師・看護師などが症状を聞き取り、緊急性や受診の必要性を判断してくれます。
自身ではなくお子様の場合は、子ども医療電話相談事業(♯8000)を利用しましょう!
小児科医師や看護師が症状を聞き取り、緊急性や受診の必要性を判断してくれます。
SFTSのまとめ
SFTSについてまとめました。
SFTSは致死率が30%と非常に高い感染症ですが、適切な予防でその被害を最小限に抑えられる病気でもあります。
また、野外活動が好きな人やペットを飼育している人であれば誰でも感染する可能性がある病気です。
野外活動歴やペット飼育歴がある方は、医療機関側にそれを伝えることができれば、SFTSを疑う症状が出た時でも医療従事者が適切な対応をとりやすいと思われます。
飼い主さんはペットである犬や猫のマダニ対策をしっかり行いましょう。
最近は有効期間が3ヶ月間という薬(年4回の投与で済む薬)もあります。
毎月の投与が大変という飼い主さんは、薬の変更をかかりつけの獣医師に相談しましょう!
マダニ対策を行うだけで、飼い主さんとペットの健康を同時に守ることができますので、ご協力お願いします。
分かりました!
教えてくれてありがとう!
どういたしまして。
参考文献
[1] TAKAHASHI, Toru, et al. The first identification and retrospective study of severe fever with thrombocytopenia syndrome in Japan. The Journal of infectious diseases, 2014, 209.6: 816-827.
[2] 厚生労働省HPの感染症情報
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)について > 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A
[3] KIDA, Kouji, et al. A case of cat-to-human transmission of severe fever with thrombocytopenia syndrome virus. Japanese Journal of Infectious Diseases, 2019, 72.5: 356-358.
[4] YAMANAKA, Atsushi, et al. Direct transmission of severe fever with thrombocytopenia syndrome virus from domestic cat to veterinary personnel. Emerging Infectious Diseases, 2020, 26.12: 2994.
[5] 森川茂, et al. 重症熱性血小板減少症候群 (SFTS) ウイルスの国内分布調査結果 (第二報). IASR, 2014, 35: 75-76.
[6] TSURU, Masatoshi, et al. Pathological characteristics of a patient with severe fever with thrombocytopenia syndrome (SFTS) infected with SFTS virus through a sick cat’s bite. Viruses, 2021, 13.2: 204.
[7] OSHIMA, Hiroaki, et al. A patient with severe fever with thrombocytopenia syndrome (SFTS) infected from a sick dog with SFTS virus infection. Japanese Journal of Infectious Diseases, 2022, 75.4: 423-426.
[8] 国立感染症研究所HPの重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
感染症発生動向調査で届出られたSFTS症例の概要
[9] 加藤博史, et al. SFTSのヒト-ヒト感染事例について(文献レビュー). IASR, 2016, 37: 48-49.
[10] 佐賀由美子, et al. 富山県で確認されたイヌの重症熱性血小板減少症候群の同時複数発生例. IASR, 2022, 43: 218-219.
[11] 清時 秀, et al. 本邦で初めて確認された重症熱性血小板減少症候群のヒト−ヒト感染症例. IASR, 2024
2024年11月16日 アッチーブ(獣医師&獣医学博士)
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