この記事を執筆した当時の私
獣医師/Ph.D.(獣医学博士)/大学や製薬会社で基礎研究に従事していた元研究者/ちょっと前まで犬・猫を診る臨床に従事していたが、現在はズーノーシスの予防と啓発ができる動物病院を探す求職者
- トイ・プードルは初心者にオススメの犬種だが、甘やかすと大変
- トイ・プードルは定期的なトリミングが必要
- トイ・プードルの飼育費用は年間30万円以上
こんちには!
獣医師の修です。
今回は、トイ・プードルの特徴や飼い方などを解説していきます。
トイ・プードルは、プードルの一番小さなサイズ*で、大きさと性格の良さから飼育しやすい犬種となっています。
この記事では、トイ・プードルの歴史・性格・注意する病気など、飼育し始める前に知っておいて欲しい情報を幅広く紹介していきます。
*ティーカップやタイニーは正式なサイズとしては認められておらず、トイ・プードルとして扱われます。
この記事のゲスト:翔太(しょうた)さん
30代前半の会社員で、自宅ではペットとして犬と猫を1頭ずつ飼育中
トイ・プードルの背景
およそ400年前からヨーロッパではスタンダード・プードルが飼育されていました。
繁殖の過程で小柄な個体を選抜した結果、ミディアム→ミニチュア→トイが確立されます。
スタンダード・プードルは水禽用の猟犬**で、ミディアム・ミニチュア・トイはヨーロッパ王族の愛玩犬だったようです。
ただ、ミニチュア・プードルはトリュフの探知犬として活躍していた歴史もあります。
元々は猟犬だったんですね。
なんか野性感があるな~
現在のイメージとは少し違いますね!
**戦時中は盲導犬としても活躍していたそうです。
プードルの名前の由来
英語で「水禽の犬」を意味する単語に由来とする説もあれば、ドイツ語で「水が跳ねる」を意味する単語に由来するという説もあります。
どちらにしても、スタンダード・プードルの特徴を反映していますね!
プードルの原産国
フランスとする説が有力ですが、イギリスやロシアとする説もあるようです。
詳細な起源については明らかになっていません。
トイ・プードルの特徴と性格
トイ・プードルの性格や特徴が知りたいです!
それでは、トイ・プードルの体高・体格・体重・性格についてまとめていきますね!
トイ・プードルの大きさ
- 体高:24~28 cm で、目立った雌雄差はない
- 体格:頭部は細く長く、胴も長くて、お尻が丸い
- 体重:2~3 kg で、こちらも目立った雌雄差はない
せっかくなので、他の3サイズも比較してみましょう!
ミニチュア
- 体高:29~35 cm
- 体重:3~6 kg
ミディアム
- 体高:36~45 cm
- 体重:6~9 kg
スタンダード
- 体高
- ♂:45 cm ~
- ♀:38 cm ~
- 体重:15~19 kg
トイ・プードルの習性と性格
性格は活発で陽気で、運動が好きです。
また、好奇心が旺盛で、観察力も高いと言われています。
忠誠心や学習能力が高いので、しつけを適切に行えば飼育しやすい犬種でしょう。
毛色によって性格が異なるという話も聞きますが、各飼い主やブリーダーの経験論だと思います。
実際は毛色よりも血統の方が影響している可能性が高いので、購入前にしっかりと確認しましょう。
私の印象ですが、トイ・プードルは美食家ならぬ美食犬というイメージがあります。
美食犬?
これがポジティブに発揮されると食欲旺盛でよく食べる犬となりますが、逆にネガティブに発揮されると食の好き嫌いが激しく、偏食や栄養過不足の原因になります。
トイ・プードルの飼育方法
飼育方法で注意した方が良いことは何ですか?
そうですね!
しつけ・日常のケア・運動時間・飼育環境についてもまとめましょう!
しつけ
初心者にオススメの犬種ですが、初めて飼う方は「可愛い」「可哀そう」という感情が先行しがちです。
感情を優先して甘やかすと飼育が大変になりますので、注意してください。
高音の鳴き声は騒音となり近隣トラブルの原因になりますので、しつけ方法をちゃんと学びましょう。
好奇心が旺盛で、観察力も高いせいか、飼い主の行動をよく見ています。
飼い主の気をひくためのアピールがすごく、それが飼い主さんからすると「可愛い」と思えるのですが、全てに応えてはいけません。
時には無視することも必要です。
まさに「心を鬼にして」ですね!
日常のケア
家庭で被毛の手入れが必要です。
抜け毛は少なめですが、毛の伸びるスピードが速いので、手入れを怠ると毛玉の原因となります。
ブラッシングは2~3日に1回、シャンプーは週1の頻度で実施しましょう。
加えて、4~6週間に1回はトリミングサロンに連れていき、プロによるカットとトリミングが必要です。
飼育にはお金がかかります。
シャンプーやトリミングだけで年間5~6万円ほどは確保が必要ですよ!
結構、かかりますね!
運動時間
散歩はどれくらい必要ですか?
たくさん運動していれば、室内だけでも大丈夫ですか?
運動は必須ですが、小型犬ですので散歩の時間は少なめです。
1回20分の散歩を朝晩の2回くらいがちょうど良いでしょう。
運動不足は骨格や筋肉の発達不足の原因になります。
室内・屋内の歩行だけで済ませる方も多いですが、散歩は毎日実施すべきです。
飼育に適した環境
「犬=冬の寒さには強い」というイメージを持つ方が多いですが、トイ・プードルは寒さに弱い犬種です。
夏季だけでなく冬季も温度管理が必要ですよ。
だから、年間を通して電気代やガス代の請求が高くなることは覚悟しておきましょう。
また、自宅では滑りにくい床材を選び、膝や脊椎に負担をかけないような環境設計をお願いします。
フローリングは日ごろの掃除や手入れが簡単な床材で人にとっては好都合ですが、足裏に毛が生える犬との相性はあまりよくありません。
ウチは床がフローリングだから対策しないとダメですね!
トイ・プードルの平均寿命
寿命ってどれくらいですか?
トイ・プードルの平均寿命は15年くらいです。
ただ、これは飼養管理や疾病管理が適切にできていればの話です。
美食による栄養過不足や日ごろのケアの怠慢による継続的なストレスは寿命を縮める原因となるでしょう。
また、定期的な健康診断の受診と予防活動に努めることも大切です。
トイ・プードルがかかりやすい病気
トイ・プードルがかかりやすい病気を教えてください。
トイ・プードルで注意したい病気や症状は以下の通りです1。
- 糖尿病
- 骨折
- 白内障
- 歯周病・歯肉炎
- 胆泥症
- 流涙症(涙やけ・涙管閉塞を含む)
- 膵炎
- 眼脂(目ヤニ)
- 甲状腺機能低下症
- 膝蓋骨脱臼(パテラ)
- マラセチア性外耳炎
- 気管炎・気管支炎
- アレルギー性外耳炎
流涙症や眼脂は病気ではありませんが、飼い主さんから相談が多い内容です。
後述しますが、ペット保険に加入される際は、上記が補償範囲に含まれているかを確認しましょう!
トイ・プードルの遺伝性疾患
日本のトイ・プードルは「進行性杆体・錐体変性症(PRCD)」という眼が見えなくなってしまう病気の原因となる遺伝子型の保有割合が高いという報告2があります。
そうな病気があるのか…
治療はできるんですか?
PRCDは、根本的な治療法がみつかっていない遺伝性疾患です。
予防法は遺伝子型を保有している個体を繁殖に使わないことです。
将来、飼育犬の繁殖を考えている場合は、遺伝子チェックを受けることをオススメします。
最近では、一般の飼主のための遺伝子検査サービスもあります。
PRCDは、原因遺伝子がハッキリしています。
遺伝子検査によって繁殖個体を適切に選別できれば、PRCDの予防・制御することができます。
これから購入する方へ
トイ・プードルをこれから購入予定の方は、PRCDに関しては血統的に問題がないことの確認が必要です。
動物福祉に理解のあるペットショップやブリーダーであれば、検査の詳細や補償について説明してくれるでしょう。
感情的になったり、内容を逸らしてくるペットショップやブリーダーから買わないことが大切ですね!
PRCDは、最終的に眼が見えなくなってしまう病気です。
購入後にそれが発覚すると心理的なダメージが大きいですね。
また、遺伝性疾患の場合はペット保険にも加入できないことが多いので、経済的なダメージも重なります。
トイ・プードルの飼育費用【1カ月あたりいくら?】
お金についても考える必要があるんですよね!
その通りです!
1カ月あたりのトイ・プードルの飼育費用を考えてみましょう。
小型犬の飼育費用の平均は、年間34万円くらいです1。
1カ月あたりに換算すると28,000円くらいですね。
購入する前に家計と相談して、上記出費が許容範囲かどうかを検討してください。
食費
フードやおやつなどの食費の価格はピンキリですが、平均すると1カ月で5,000円ほどかかります。
もちろん、食物アレルギーや尿路結石などに罹患すると、専用フードによる管理が必要になりますので費用はかさみます。
日用品代
トイレシーツなどの日用品が1カ月で2,000円前後です。
シャンプー・トリミング代
トイ・プードルは、ブラッシングやシャンプーなどの手入れが必須です。
家庭でやるだけでは不十分で、トリミングサロンでプロのケアをお願いする必要があります。
頻度としては4~6週間に1回が適切で、1回あたり5,000~8,000円はかかります。
これは盲点ですよね。
普通に飼っていれば毛も勝手に整うと考えている人が多いような…
飼い主さんが理髪店や美容院に行くのと同じように考える必要がありますね!
光熱費
飼育に伴って追加で発生する光熱費は、年間で12,000円くらいです。
寒さに弱いため秋~冬の温度管理も重要になりますので、年間を通して電気代やガス代が高額になることは覚悟しましょう。
医療費
フィラリアやノミ・ダニの予防薬など、健康であっても医療費として年間で3~4万円ほどが必要になります。
1カ月にすると3,000円くらいですね。
ココへ病気の治療代やサプリメント代が発生するので、注意してください。
例えば、糖尿病の年間治療費の中央値は16万円ほどで、1カ月あたり13,000円がかかります。
ペット保険
ペットの年齢や犬種によって保険料は変わりますが、小型犬の1ヶ月の保険料は2,000~4,000円ほどです。
歯科治療や膝蓋骨脱臼(パテラ)が補償対象外のペット保険もありますので、保険選びの際は注意してください。
トイ・プードルのまとめ
トイ・プードルの歴史・性格・寿命・注意すべき病気・飼育費用についてまとめました。
初心者にオススメの犬種ですが、しつけを適切に実施しないと飼育は大変です。
また、定期的なトリミングが必須の犬種ですので、そのための費用もしっかり確保しなければなりません。
ペットを飼うと環境や家計が激変しますね!
本当にそうですね!
トイ・プードルを購入予定の方は、本記事で書いたことを想像してみましょう。
そして、最後まで責任をもって面倒をみることができるかを検討してみましょう。
責任ある飼い主さんと出会えたトイ・プードルは、周囲からも愛される犬へと育ってくれるでしょう。
参考文献リスト
1アニコムの家庭どうぶつ白書
2KOHYAMA, Moeko, et al. Real-time PCR genotyping assay for canine progressive rod-cone degeneration and mutant allele frequency in Toy Poodles, Chihuahuas and Miniature Dachshunds in Japan. Journal of Veterinary Medical Science, 2016, 78.3: 481-484.
2024年1月14日 修(獣医師&獣医学博士)
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