この記事を執筆した当時の私
獣医師/Ph.D.(獣医学博士)/大学や製薬会社で基礎研究に従事していた元研究者/ちょっと前まで犬・猫を診る臨床に従事していたが、現在はズーノーシスの予防と啓発ができる動物病院を探す求職者
- 教育に無関心な院長は多い
- 教育に無関心な動物病院は2種類
- 猫をかぶる院長に注意
こんちには!
獣医師の修です。
私は病院選びを間違えました。
「どうして間違えたのか?」を考えてみると「ヤバい共通点」に気づきます。
就職する前にそれを知っていたら、きっと就職しなかったでしょう。
私と同じような状況には陥る人が減ることを期待して、当サイトではその「ヤバい共通点」を言語化して学生向け(転職者向け)に発信中です!
3回目の今回は、院長が新人育成に無関心な動物病院です。
院長が新人育成に無関心な動物病院はヤバイ
教えることが下手な院長・教育に無関心な院長は多いです。
私が経験した病院は全て「見て学べ」スタイルでした。
「やり方を教えて欲しい」とお願いしても「何でも聞くんじゃない!やり方なら見て学べ!」という説教が始まるんですよね…
どういうわけか、私が就職した動物病院の院長は皆、似たようなことを口にしていました。
みんな見て、考えて頑張ってますよ~
どうして君はそれができないの?
俺がやっているのをちゃんと見てないから出来ないんだ!
俺も若い時、院長の背中を見て学んだよ。
だから、お前もそうするの!
大学院時代を思い出します。
博士課程の時も指導教官や先輩は後輩の指導に無関心な「見て学べ」スタイルでした。
そういう扱いには慣れているのですが、それでもやっぱり怖い!
院生の舞台は実験室なので扱っている動物は「実験」の一環です。実験動物を雑に扱うって意味ではないですよ!然るべき申請を行い、技術習得が目的の動物実験として承認を得た「実験」なので、ある程度の失敗は許容されています。
それと同じ状況であれば、「見よう見まね」でチャレンジする気になりますが…
全く違いますよね!
私がいるのは動物病院で、診ている犬や猫は飼い主さんから預かっている財産です。
「見よう見まね」でやるのは怖すぎる…
2種類の教育に無関心な動物病院
自分の実体験や他の獣医師から聞いた話を総合すると、教育に無関心な動物病院は2種類に分けることができます。
- 実践する機会を与えず、ただ放置する動物病院
- 場数を踏ませて慣れさせようとする動物病院
新人を放置する病院
一国一城の主である院長が自身の好きなように仕事をしたいという考えから、自分の仕事のサポートだけを期待しているパターンです。
実践する機会は与えられず、ただひたすら独学で勉強を続ける日々を送る若手獣医師は多いかもしれません。
院長の指示の下で、採血・採尿・マイクロチップ挿入・投薬などの診療の補助するだけなので、「獣医師資格を持っている愛玩動物看護師」みたいな感じですね。
そういう院長は、自ら「やらせてください」と立候補する獣医師でないとダメですね。
- やる気がない
- 「やらせて欲しい」と言わない
- 実践経験が積めない
- 成長しない
- 「それは君の問題でしょ。」
院長の主張としては上記のようなロジックです。
新人に場数を踏ませて慣れさせる病院
臨床経験数が診断の精度と相関していると考えている院長に多いタイプの動物病院です。
とにかく新人に場数を踏ませて経験を積ませれば、人は成長すると思っています。
たしかに、「立場が人を作る」という言葉もありますが…
今まで(学生、私の場合は研究職)とは違う立場(臨床獣医師)になっても、その責任感のもと一生懸命がんばれば、動物のお医者さんと呼ばれるにふさわしい臨床家になれますよ。
意味合いとしてはこんな感じでしょうか?
でも、獣医師の臨床経験と診断精度には相関がないと思います。
オランダの医学教育に関する報告[1]では、正しい診断と臨床経験の間に交互作用は認められず、適切なフィードバックを受けていることが重要としています。
がむしゃらに経験を積むのではなく、誤った結果解釈や診断を認識し、その理由を言語化することが重要ってことですね!
きっと、臨床獣医師も同じだと思います。
交互作用(Interaction)とは?
2つの因子が組み合わさって初めて確認できる相乗効果を交互作用と言います。
今回の論文では「臨床経験年数」と「正しい診断」を因子として調査し、適切なフィードバックを受けた群とそうではない群で比較解析していました。
言語化が苦手な院長たち
獣医療業界に限らず、昔は「俺の背中を見て学べ」が主流だったのでしょう。
院長たちはその環境で育った(育ってしまった)ので、教える理論を持ってないんだと思います。
言語化が苦手な職人さんってことですね!
もちろん,言語化するのが難しい技術や領域は存在するのでしょうし、言葉とか数字では説明できないことも多々あるでしょう。
でも、それを「俺の背中を見て学べ」の一言で片づけるのは教える側の怠慢です。
見学するときは院長や指導医の発言に注意
動物病院を見学する時は、院長や指導医が若手獣医師に対して次のような発言をしていないか確認しましょう!
院長が言ってることはやるんだよ。
屁理屈こねないで、言われた通りにやって欲しいな~
言語化が苦手な院長(指導医)たちは、こんな発言が口癖になっていると思います。
きっと、言語化した指導の経験がないから教えることができないのでしょう。
私は、動物病院の方針や院長・指導医からの指示でも鵜呑みにせず、自分の頭で考えて組み立てたいタイプです。こういう発言をしている動物病院に就職したことが間違いでした。
猫をかぶる院長もいた
私は就職する動物病院を何度も間違えた経験から、最近就職した動物病院では「『背中を見て学べ』の指導ではなく『言語化した指導』を希望します」と伝えました。
就職前の面接や見学ではそれを了承してくれていたのですが、実際に就職してみると全然違いました。
勤務日初日から「言われた通りにやれ!」、「院長が言ってることはやるの!」の洗礼w
人を増やして業務の負担を減らしたいと考えている院長の中には、上記のように猫をかぶる者もいるので要注意です。
こういう院長がいる動物病院を選ばないようにするには、とにかくスタッフに質問して本性を確認するしかありません。
私は自身の考えや想いを理解・尊重してくれることを優先しすぎて、スタッフにあまり質問しなかったので、院長の本性を見破ることができませんでした。
ところで、院長は何のために人を雇うのでしょうか?
- 教育に無関心
- 新人が育たない
- 人が増えても業務は楽にならない
- 人件費だけが増え、忙しい日々は変わらず
これって悪循環ですよね?
【まとめ】新人育成に無関心な動物病院はヤバイ
院長が新人育成に無関心な動物病院についてまとめました。
院長たちは「背中で教えている」つもりかもしれません。
でも、実際は何も伝わらないんですよね。
誤った解釈や診断を認識できるように言語化してフィードバックすることが一番の近道だと気付いている院長の下で働きたいw
ただ、働き方や理想とする獣医師像は人それぞれだと思いますので、職人気質な院長に憧れている人も中にはいるでしょう。
実際、アニメやマンガに出てくる職人気質なヒーローは多いですからね。
そういう人は本記事の内容を無視してもらって構いません!
私は、学生や転院を考えている先生方がそんな病院に就職して後悔しないことを優先したいだけです。
参考文献
[1] NEDERHAND, Marloes L., et al. The effect of performance standards and medical experience on diagnostic calibration accuracy. Health Professions Education, 2018, 4.4: 300-307.
2024年1月5日 修(獣医師&獣医学博士)
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