この記事を執筆した当時の私
獣医師/Ph.D.(獣医学博士)/大学や製薬会社で基礎研究に従事していた元研究者/現在は動物病院で犬・猫の診療をしている臨床獣医師
- 安易な気持ちで動物を飼うのは止めましょう
- 飼育環境を整えてからペットを飼いましょう
こんにちは!
獣医師の修です。
突然ですが、以下の動画をご覧になったことはありますか?
見ていると悲しくなりますね…
ただ、次のような理由でペットを手放す人が多いのは事実だと思います。
- 予想以上に大きくなった
- 家族旅行に連れていけない
- 鳴き声や臭いで近所に文句を言われた
- こんなにお金がかかるとは思わなかった
- 引越し先でペットを飼うことができないと言われた
そして、最近、ペットの飼育放棄が増えているようです。
新型コロナウイルス感染症の影響で在宅時間が増えた結果、ペットの需要が高まりました。
安易な気持ちで飼い始めた人たちが様々な理由で飼育困難に陥っているそうです。
今回は、寿命・費用・餌・引越し等々、ペットを飼う前に考えて欲しいことをまとめました。
「ペットを飼う前に考えること」のリストも作ったので、これからペットを飼う予定の人はチェックしてみましょう。
この記事のゲスト:翔太さん
30代前半の会社員で、自宅ではペットとして犬と猫を1頭ずつ飼育中
ペット飼育に隠された【9個】のリアルな課題
以下は、私が提案する「ペット飼育前に考えること」です。
- その動物はどのくらい生きますか?
- どのくらい大きさに成長しますか?
- そのペットは何を食べるのですか?
- 飼育にはどれくらいの費用がかかりますか?
- その動物を診てくれる動物病院は近くにありますか?
- そのペットにはどのような運動がどのくらい必要ですか?
- あなたの自宅(アパートなど)ではペットの飼育は可能ですか?
- ペットの世話や後始末をきちんとするのに十分な時間がありますか?
- ペットの世話する方の家族に、幼児・高齢者・免疫力の弱い人たちはいませんか?
それでは1つずつ確認していきましょう!
寿命はどれくらい?
飼育しようとしている動物の寿命はどのくらいか調べてみましょう。
例えば、犬の寿命は14年くらいで、猫の寿命は15年くらいです。
品種・飼育方法などによっても寿命は変わるので多少の差はあるでしょう。
でも、正確な数値を知ることが目的ではないので、そこは気にしないでください。
動物のおよその寿命を把握し、あなたはその動物が亡くなるまで面倒をみることができるかを考えることが大切です。
その他の動物はどのくらい生きるんですか?
以下にペットとして飼われることが多い動物の寿命をまとめました。
動物 | 寿命 |
小型犬 | 14~16年 |
中型犬 | 13~15年 |
大型犬 | 7~12年 |
猫 | 12~18年 |
ハムスター | 2~3年 |
モルモット | 5~6年 |
うさぎ | 7~8年 |
デグー | 5~8年 |
フェレット | 6~8年 |
セキセイインコ | 7~8年 |
ウズラ | 7~8年 |
ミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ) | 15~40年 |
犬と猫を飼う時、こんなこと考えなかったな~
何となくで飼い始めた後に寿命を知ると大変かもですね…
大人になったら大きさはどれくらい?
一目惚れやその場の勢いで飼育を始めてしまい、その動物がどのくらい大きくなるか把握していなくて後悔する人は多いように思います。
体高は飼育スペースに影響しますし、体重は移動方法に影響します。
当然、体が大きくなれば力も強くなるので、散歩などは重労働になります。
その動物が要介護状態になった時を想像しましょう!
- 抱っこして運べますか?
- 床ずれ防止の寝返りをサポートできますか?
- 周囲にそれを手伝ってくれる人はいますか?
人であれば福祉制度を活用できますが、動物にはそれがありません。
恥ずかしながら、大きさも考えなかったです。
なんとなく「これくらいでしょ」ってイメージで飼いました…
大型犬も大きさは様々
一言で「大型犬」といっても、その大きさは品種によって変わります。
体重 20~30 kg くらいの犬もいれば、50 ~ 70 kg の犬もいます。
品種の特徴をよく調べてから飼いましょう!
大きい犬
大きい犬を飼いたいんですけど、どんな犬がオススメですか?
何度かこんな人に出会ったことがあります。
「大きい犬」も受け止め方は様々です。
体高(体の大きさ)が高い犬なのか?
それとも体重が重い犬なのか?
犬種によって性格が異なりますし、それが飼育方法にも影響するので注意しましょう。
餌は何を与えるの?
ハムスターの主食はひまわりの種だと思っている人はいませんか?
違うんですか?
違います!
与えすぎると肥満の原因になります。
このように、イメージばかりが先行して正しい飼育ができていない人も多いです。
動物種や年齢(時期)によってに必要とする栄養素が変わります。
猫をドッグフードで育てたり、人と同じ食べ物を与えて飼育することは止めましょう。
動物が必要している栄養素を満たしているフードを与えるようにしましょう。
エキゾチックアニマルなど特殊な動物の場合は「フードが何か?」だけでなく、「それを継続的に入手できる環境にあるか?」も同時に考えてください。
飼育費用はどれくらいかかる?
動物を飼うにはお金がかかります。
犬の飼育には毎月2万9千円がかかりますし、猫の飼育には毎月1万4千円がかかります。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
動物病院は近くにある?
多くの動物病院は犬・猫が専門で、その他の動物を診てくれません。
なぜなら、診ることができないからです。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
うさぎ・フェレット・ハムスター・鳥類・爬虫類などのエキゾチックアニマルを飼育したい人は、近くにそれを診てくれる動物病院があるか探してみてください。
近くに診てくれる動物病院がない場合は、あなたが遠方まで出向くことができるか考えてみましょう。
大型犬は要注意
犬・猫が専門でも、大型犬の場合は注意が必要です。
どういう意味ですか?
日本は大型犬の飼育者が少ないので、設備・機器などが大型犬に対応していない病院も多いからです。
ワクチンやフィラリアの予防など予防関連は対応できても、健康診断や治療には対応していない所があるので、注意してください。
ホームページの確認だけではダメ
動物病院のホームページ(HP)でエキゾチックアニマルの診察が可能と書いてあっても鵜呑みは厳禁ですよ。
どうしてですか?
理由は3つあります。
- 動物種ごとに診られるかどうか判断するから
- 担当医が不在の場合もあるから
- HPを更新していない可能性もあるから
動物種ごとに診察可能か判断
エキゾチックアニマルは多種多様な動物を含みます。
動物種ごとに診察可能かどうか判断するので、動物種が指定されているか確認してください。
担当医が不在の場合もある
エキゾチックアニマルの診察を担当している獣医師が常駐していない場合も多いです。
週1回とか月1回しか担当医がいない場合でも「エキゾチックアニマルも可」と書いてある動物病院はあります。
どうしてそんなことするんですか!?
誤解を恐れずに言えば、それで客寄せしているってことですね。
担当医の出勤日・診察日はいつかも必ず確認しましょう!
HPを更新していない可能性
昔は担当医が勤務してたけど現在はいないってケースですね。
どうしてHPを更新しないの?
たぶん、更新の仕方が分からないんだと思います。
HPの作成および管理を外注している動物病院は多いです。
病院が管理していない所では、どうやったら情報更新できるかをスタッフが把握していないこともあります。
ちなみに、あえて更新しない、悪質な所もありますよ。
「HPを見た」という飼い主さんがエキゾチックアニマルを連れてきたら、とりあえず診て、色々理由を付けて他院を紹介する動物病院はあります。
えっ!?
それだけでも初診料は取れるからですね。
ホント、悪質ですね!
営利目的で開業しているから、仕方ないんですよ。
散歩などの運動は必要?
動物の大きさや特徴によって必要な運動量は変わってきます。
運動欲求が高めの犬なら朝・夕の2回の散歩が必須です。
大型犬であれば1回の散歩で30分~1時間は割く必要があるでしょう。
自宅でペットの飼育は可能なの?
一軒家であれば飼い主さんの自由かもしれませんが、賃貸ではそうはいきません。
ペット飼育可の物件に住んでいても、動物種を指定している場合があります。
バレなきゃ大丈夫やろ。
このように考える人もいるかもしれませんが、絶対に「ペット不可」の物件で動物を飼わないようにお願いします。
様々な理由から「動物が嫌いだ」という人は一定数存在します。
そのような人たちは「ペット不可」という条件を信じて物件を借りているはずです。
動物を飼う人は、動物が嫌いな人にも配慮できなくてはなりません。
引越しの可能性は?
現在はペット飼育可の物件に住んでいても、転勤などで引越しする予定がある人は注意してください。
引越しをきっかけとした飼育放棄も多いという印象があります。
ペット飼育可の物件が勤務先付近に見つからなかったなどの理由があるようです。
最近は転勤族も減る傾向にあるので、そういった飼育放棄も減ると信じたいですね。
家族等でサポートできる人を探す
転勤族だけどペットは飼いたいという人はいるでしょう。
その場合は家族や親族で一時的にでも預かってくれることが可能かを検討しましょう。
「1年間だけ本社勤務になったから、その間だけ預かって」みたいな感じ?
そうですね!
家族等でサポートできる人がいれば問題ないでしょう。
十分な時間がありますか?
お散歩の時間・ブラッシングの時間・ケージの掃除の時間などペットのための時間を確保することはできますか?
コスパ・タイパ重視の現代人にとって、ペットのための時間確保は厳しいかもしれません。
「仕事が忙しい」「子育てが忙しい」などは飼育放棄の理由になりませんよ。
餌と水だけあげておけば大丈夫じゃない!?
このように考えている人がいたら、ペットは飼わないでください。
家族の構成は?
人獣共通感染症の予防の観点から、家族構成は非常に重要です。
以下に挙げるような人が家庭にいませんか?
- 5歳未満の子供
- 65歳以上の高齢者
- 現在、妊娠中の方
- 免疫力が低下している人
上記の人がご家庭にいらっしゃる場合は、動物種や飼育方法をよく考えた方が良いですよ。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
【まとめ】ペットを飼う前に考えること
獣医師の立場から「ペットを飼う前に考えること」をまとめました。
リストも作成したので、よろしければお使いください。
動物を飼うのは大変ですよ!
お金はかかるし、体力は使うし、時間もかかります。
でも、こういったことを乗り越える覚悟と環境がある人たちであれば、ペットとの楽しい生活を実現できるとも信じています。
この記事が「安易な気持ちで飼い始めた人たち」の減少につながれば嬉しいです。
僕も次にペットを飼うときは色々考えて決めるようにします。
そう言ってもらえると書いた甲斐があります!
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
2023年12月12日 修(獣医師&獣医学博士)
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